持続化補助金のインボイス特例|要件と上乗せ50万円
制度・仕組み
公開: 2026年9月11日
更新: 2026年9月11日
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この記事の結論
インボイス特例は、インボイス制度の導入に対応する小規模事業者の負担に配慮して設けられた特例です。該当すると補助上限額が50万円上乗せされます(P.7、P.8)。
インボイス特例とは(補助上限が50万円上乗せされる)
インボイス特例は、インボイス制度の導入に対応する小規模事業者の負担に配慮して設けられた特例です。該当すると補助上限額が50万円上乗せされます(P.7、P.8)。
| 区分 | 補助上限 | 補助率 |
| 基本(特例なし) | 50万円 | 2/3 |
| インボイス特例あり | 100万円 | 2/3 |
| 賃金引上げ特例あり | 200万円 | 2/3(赤字事業者は3/4) |
| 両方の特例あり | 250万円 | 2/3(赤字事業者は3/4) |
表を見て押さえておきたいのは、インボイス特例が変えるのは上限額だけで、補助率には影響しないという点です。補助率が2/3から3/4に上がるのは、賃金引上げ特例を使う赤字事業者のケースに限られます(P.11)。「インボイス特例を使えば自己負担が減る」という理解は正確ではありません。
上限が上がっても、経費がなければ補助額は増えません
補助額は、対象経費に補助率を掛けた額と補助上限額のうち小さいほうです。上限100万円を受け取るには150万円の対象経費が必要になります(補助率2/3の場合)。特例は天井を上げるだけなので、投資の規模がそれに見合わなければ意味を持ちません。
補助上限と補助率の全体像は補助率と上限額、制度全体は持続化補助金2026完全ガイドで確認できます。
インボイス特例の要件
公募要領は、インボイス特例の対象を次のように定めています(P.8)。基本要件と追加要件の両方を満たす必要があります。
| 区分 | 要件 |
| 基本要件 | 補助事業終了時点で適格請求書発行事業者の登録を受けていること |
| 追加要件① | 2021年9月30日から2023年9月30日までの属する課税期間で、一度でも免税事業者であったこと |
| 追加要件② | 2023年10月1日以降に創業したこと |
追加要件は①か②のいずれかに該当すればよい構造です。①はインボイス制度の開始前に免税事業者だった事業者、②は制度開始後に事業を始めた事業者を想定しています。どちらにも当たらない事業者、すなわちインボイス制度の開始前からずっと課税事業者だった事業者は、この特例の対象になりません。
「一度でも免税事業者であった」の読み方
要件①は、対象期間中の課税期間において一度でも免税事業者であったことを求めています。期間全体を通じて免税事業者であり続けた必要はありません。制度開始を前にして課税事業者になった、というケースも、その前に免税事業者であった課税期間があれば要件に当たりえます。自社の課税期間ごとの区分がどうなっているかは、確定申告の内容や顧問税理士への確認で把握できます。
要件の確認に必要な情報
- 適格請求書発行事業者としての登録の有無(未登録の場合は登録の予定)
- 2021年9月30日から2023年9月30日までの属する課税期間における課税事業者・免税事業者の別
- 創業日(2023年10月1日以降であれば要件②に該当)
- 過去に通常枠のインボイス特例、またはインボイス枠で採択・実施したことがあるか
過去にインボイス特例を使った事業者は対象外
要件を満たしていても、過去の利用歴によっては対象外になります。公募要領は、過去に通常枠のインボイス特例、またはインボイス枠で採択され事業を実施した事業者をインボイス特例の対象外としています(P.8)。
| 過去の状況 | 第20回でのインボイス特例 |
| 通常枠のインボイス特例で採択され、事業を実施した | 対象外 |
| インボイス枠で採択され、事業を実施した | 対象外 |
| 持続化補助金に採択されたが、インボイス特例・インボイス枠は使っていない | 他の要件を満たせば利用できる |
| 過去に申請したが不採択だった | 他の要件を満たせば利用できる |
この制限はインボイス特例に固有のもので、上乗せを一度受けた事業者が繰り返し利用することを防ぐ趣旨です。なお、これとは別に、補助金そのものへの申請可否を左右する制限もあります。過去に持続化補助金で採択されて事業を実施した場合、様式第14の事業効果および賃金引上げ等状況報告書を提出済みであり、かつ事業実施期間終了月の翌月から1年が経過していることが求められます(P.5)。
創業型との関係
創業型に申請中または採択済みの事業者は、一般型 通常枠そのものの対象外です(P.5)。創業型 第4回の受付締切は通常枠 第20回と同じ2026年12月15日なので、2023年10月1日以降に創業した事業者は、通常枠でインボイス特例を使う道と創業型で申請する道のどちらを選ぶかを早い段階で決める必要があります。創業型の要件は創業型、申請できる事業者の範囲は対象者の定義で確認してください。
インボイス特例を使うと補助額はどう変わるか
上限が50万円上がることで、必要になる対象経費の規模も変わります。以下は補助率2/3を前提にしたモデルケースの計算です。
| 対象経費の合計 | 2/3を掛けた額 | 特例なし(上限50万円) | インボイス特例あり(上限100万円) |
| 60万円 | 40万円 | 40万円 | 40万円 |
| 75万円 | 50万円 | 50万円(上限) | 50万円 |
| 90万円 | 60万円 | 50万円(上限) | 60万円 |
| 120万円 | 80万円 | 50万円(上限) | 80万円 |
| 150万円 | 100万円 | 50万円(上限) | 100万円(上限) |
| 180万円 | 120万円 | 50万円(上限) | 100万円(上限) |
上表は補助率と上限額の関係を示すためのモデルケースであり、採択や補助額を保証するものではありません。
表の1行目と2行目が示すとおり、対象経費が75万円以下であればインボイス特例を使っても補助額は変わりません。特例が効いてくるのは、対象経費が75万円を超える規模の計画からです。逆に150万円を超えると今度は上限100万円で頭打ちになります。つまりインボイス特例が意味を持つのは、対象経費が75万円から150万円のあいだに収まる計画だということになります。
区分ごとの上限は別にかかります
全体の上限が100万円になっても、広報費とウェブサイト関連費の上限は補助金交付申請額で30万円(税込)のまま変わりません(P.13、P.14)。ホームページやシステムへの投資を軸にした計画では、上限が上がっても計上できる額は増えません。第19回までの「交付申請額の1/4」という按分ルールは第20回には適用されないので、古い解説を前提にした試算には注意してください。
経費区分ごとの上限と範囲は対象経費一覧で確認できます。
判定の基準時点は「補助事業終了時点」
インボイス特例で最も誤解されやすいのが、要件を判定する時点です。公募要領は、適格請求書発行事業者の登録を補助事業終了時点で受けていることを求めています(P.8)。申請時点で登録済みである必要はありません。
| 時点 | 第20回の日付 | インボイス特例に関して |
| 申請受付開始 | 2026年11月5日 | 登録済みでなくても申請は可能。様式9を提出する |
| 申請受付締切 | 2026年12月15日 17:00 | 特例を使う旨を申請内容に含める |
| 採択発表 | 2027年3月頃の予定 | この時点ではまだ補助金は確定しない |
| 交付決定 | 採択発表からおおむね1〜2か月 | この日以降の発注・支出が補助対象になる |
| 補助事業実施期限 | 2028年3月31日 | この時点で適格請求書発行事業者の登録を受けている必要がある |
| 実績報告書の提出期限 | 2028年4月10日 | 要件の充足を含めて報告する |
この設計は、これから登録しようとしている事業者にも特例を使う道を開くものです。一方で、登録の予定を立てたまま実行しなければ要件を欠くことになります。補助事業の期間は2028年3月31日まで続くため、登録をいつ行うかを含めて計画に織り込んでおいてください。登録の手続きや所要期間については、所轄の税務署または顧問税理士にご確認ください。
日程全体との関係
第20回の申請受付は2026年11月5日に始まり、締切は2026年12月15日17時です。その前に商工会・商工会議所から事業支援計画書(様式4)の発行を受ける必要があり、様式4の発行受付締切は2026年12月4日と先に来ます(P.3)。インボイス特例を使う場合は、様式9や登録通知書の写しといった追加書類もこの日程のなかでそろえることになります。日程の組み方は第20回のスケジュールにまとめています。
必要書類と申請の手続き
インボイス特例を使う場合、通常の提出書類に加えて追加の書類が必要になります(P.26〜31)。
| 書類 | 内容 | 入手先 |
| 様式9(宣誓・同意書) | インボイス特例の要件に該当する旨を宣誓する書類 | 公募要領・公式サイトの様式集 |
| 適格請求書発行事業者の登録通知書の写し等 | 登録を受けていることを示す書類 | 登録済みであれば手元の通知書 |
| 様式1〜3・5・6 | 申請書、経営計画、補助事業計画、交付申請書、宣誓同意書 | 電子申請システムに直接入力(添付不要) |
| 様式4(事業支援計画書) | 商工会・商工会議所が発行 | 地域の商工会・商工会議所 |
| 決算書・確定申告書等 | 法人は直近1期の貸借対照表・損益計算書、個人は直近の確定申告書一式 | 自社・顧問税理士 |
適格請求書発行事業者の登録通知書は、手元にない場合に確認や再発行の手続きが必要になることがあります。申請準備の早い段階で所在を確かめておくと、締切直前に慌てずに済みます。
申請は電子申請システムのみ
第20回の申請方法は電子申請システムによる提出だけで、郵送は受け付けられません(P.3)。電子申請にはGビズIDプライムまたはメンバーのアカウントが必要で、暫定アカウントでは申請できません。取得に数週間かかる場合があるとされているため、早めに手続きしてください(P.22)。なお第20回の申請先URLは公募要領P.23の時点で調整中と記載されているので、申請の直前に公式サイトで最新の案内を確認してください。手順はGビズIDと電子申請、書類の全体像は必要書類で確認できます。
要件を満たせなかった場合のリスク
特例による上乗せは、採択された時点で確定するものではありません。公募要領は、特例上乗せが補助事業終了時点で要件を満たさないと交付されないとしたうえで、上乗せ部分だけでなく補助金全体が不交付になる場合があると明記しています(P.7〜11)。
| 状況 | 起こりうること |
| 補助事業終了時点で適格請求書発行事業者の登録を受けていない | 上乗せ分が交付されない。場合によっては補助金全体が不交付 |
| 追加要件(免税事業者であった期間、または2023年10月1日以降の創業)に実は該当していなかった | 同上 |
| 過去に通常枠のインボイス特例・インボイス枠で採択・実施していた | インボイス特例の対象外 |
| 様式9や登録通知書の写しを提出しなかった | 特例の適用を受けられない |
インボイス特例は、賃金引上げ特例と比べれば要件の達成が自社の手続きで完結する分、見通しを立てやすい特例です。賃金引上げ特例が2027年4月からの12か月で年平均3.0%以上の賃上げという業績に左右される条件を課すのに対し、インボイス特例は登録を行うかどうかという意思決定の問題だからです。ただし、要件に該当すると思い込んで申請し、後から追加要件を満たしていなかったと分かる事態は避けなければなりません。課税期間ごとの免税・課税の別は、申請前に確定申告の内容で確認しておいてください。
採択は補助金の受取を意味しません
採択の後に全計上経費の見積書等を提出し、審査を経て交付決定に至ります。交付決定前の発注・契約・支出はすべて対象外です(P.24〜26)。見積書等の提出期限は2028年2月29日で、これを過ぎると採択が取り消されます。特例の有無にかかわらず共通する流れなので、申請の流れもあわせて確認してください。
賃金引上げ特例との併用
インボイス特例と賃金引上げ特例は、両方の要件を満たせば併用できます。その場合の上乗せは合計200万円で、補助上限は250万円になります(P.7)。
| 項目 | インボイス特例 | 賃金引上げ特例 |
| 上乗せ額 | 50万円 | 150万円 |
| 補助率への影響 | なし(2/3のまま) | 赤字事業者は3/4になる |
| おもな要件 | 補助事業終了時点で適格請求書発行事業者の登録。かつ所定期間に免税事業者であったか2023年10月1日以降の創業 | 2027年4月1日から2028年3月31日までと前年同月の12か月を比較し、従業員1人あたり給与支給総額を年平均3.0%以上増加 |
| 必要書類 | 様式9、適格請求書発行事業者の登録通知書の写し等 | 様式7。赤字事業者は法人税申告書別表一・四の写しも |
| 達成の難易度 | 自社の手続きで完結しやすい | 業績や人員計画に左右される |
| 加点との関係 | 特段の連動なし | 赤字事業者は赤字賃上げ加点(重点政策加点)が自動適用 |
併用を検討する場合、判断の重心は賃金引上げ特例のほうにあります。上乗せ額が150万円と大きい一方、2027年4月からの12か月にわたって年平均3.0%以上の賃上げを実行する必要があり、達成できなければ補助金全体を失うおそれがあるためです。従業員の定義も対象者要件の「常時使用する従業員」とは異なり、非常勤を含み代表者・役員・専従者を除く範囲で計算します(P.9)。
なお、賃金引上げ特例の3.0%と、政策加点である賃金引上げ加点の2.0%は別の基準です(P.9、P.32〜41)。数字が近いため取り違えやすい部分なので、申請書の記載が矛盾しないよう確認してください。詳細は賃金引上げ特例で扱っています。
インボイス対応の専門家相談費用は例外的に対象
インボイス制度に関連して、経費の面でも1つだけ例外的な扱いがあります。持続化補助金では税理士・公認会計士・弁護士への費用やコンサルティング・アドバイス費用が原則として対象外ですが、インボイス制度対応のための専門家相談費用だけは委託・外注費として例外的に対象とされています(P.18〜20)。
| 支出 | 扱い |
| インボイス制度対応のための専門家相談費用 | 例外的に対象(委託・外注費) |
| 税理士・公認会計士・弁護士への一般的な費用 | 対象外 |
| 経営コンサルティング・アドバイス費用 | 対象外 |
| 補助金の応募書類の作成を依頼する費用 | 対象外 |
| ウェブサイト関連のコンサルティング・アドバイス費用 | 対象外 |
この例外は、インボイス特例を使うかどうかとは別に、対象経費のルールとして設けられているものです。ただし範囲は限定的で、顧問契約の一部として日常的に受けている税務相談まで含まれるわけではありません。インボイス制度への対応という目的が明確で、内訳が説明できる支出であることが前提になります。
免税事業者は消費税等も補助対象になり得ます
課税事業者の場合、消費税等は仕入税額控除で取り戻せるため補助対象外で、交付申請額は消費税等仕入控除税額を減額して申請します(P.24〜26)。一方、免税事業者、簡易課税を選択している事業者、2割特例を適用している事業者については、消費税等が補助対象となり得ます。インボイス特例の対象になる事業者はもともと免税事業者だったケースが多いため、自社がどの区分かで対象経費の計算が変わる点を確認してください。
対象外になる経費の全体像は対象外の経費にまとめています。
インボイス特例でよくある誤解
インボイス特例は、制度名から内容を推測しにくいこともあって、理解の行き違いが起きやすい部分です。第20回の公募要領にもとづいて整理しておきます。
| よくある理解 | 第20回の実際 |
| インボイス登録をすれば50万円がもらえる | 上がるのは補助上限額。実際の補助額は対象経費に補助率を掛けた額との比較で決まる(P.7、P.8) |
| インボイス特例を使うと補助率が上がる | 補助率は2/3のまま。3/4になるのは賃金引上げ特例を使う赤字事業者のみ(P.8、P.11) |
| 申請時点でインボイス登録が済んでいないと使えない | 要件は補助事業終了時点での登録(P.8) |
| インボイス登録の手数料や税理士費用が補助される | 税理士費用は原則対象外。インボイス制度対応のための専門家相談費用だけが例外(P.18〜20) |
| 課税事業者ならだれでも使える | 所定期間に免税事業者であったか、2023年10月1日以降の創業であることが必要(P.8) |
| 採択されれば上乗せ分が確定する | 補助事業終了時点で要件を満たさなければ交付されず、補助金全体が不交付になる場合もある(P.7〜11) |
| 一度使った翌年も使える | 過去に通常枠のインボイス特例・インボイス枠で採択・実施した事業者は対象外(P.8) |
4行目は経費のルールとの混同です。インボイス特例は補助上限を上げる仕組みであり、インボイス制度への対応にかかった費用を補助する仕組みではありません。補助されるのはあくまで8区分の対象経費で、その天井がこの特例で上がる、という関係です。
検討の順序
- まず自社が一般型 通常枠の補助対象者にあたるかを確認する
- 取り組みたい内容を8区分に当てはめ、対象経費の合計を出す
- その合計が75万円を超えるなら、インボイス特例の要件に該当するか確認する
- 該当するなら様式9と登録通知書の写しを準備し、補助事業終了時点までの登録の見通しを立てる
- 対象経費が150万円を大きく超える計画なら、賃金引上げ特例の併用も検討する
この順序で考えると、特例ありきで計画を膨らませる進め方を避けられます。補助金は精算払いで、経費はいったん全額を自社で支払うことになるため、上限額の大きさより支出総額を賄えるかどうかが実務上の制約になります。
出典・参考情報
最終更新日: 2026年9月11日。本記事は第20回公募 公募要領 第8版の内容にもとづいています。要件・金額は変更される場合があります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。税務上の取扱いについては所轄の税務署または税理士にご相談ください。本記事の試算はモデルケースであり、採択や補助額を保証するものではありません。